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2016-03-22

One Health(ワンヘルス)

One Health(ワンヘルス)をご存知でしょうか?

今、ワンヘルスに向かって世界中の国々が計画を立て、すぐそこに迫っている危機に立ち向かおうとしています。

3月20日、厚生労働省主催で、「人と動物の一つの衛生を目指すシンポジウム」が開催され、勉強に行ってまいりました。

 

世界中で新しい感染症が次々と発生しております。

そのほとんどは人畜共通感染症です。

新型インフルエンザも、エボラ出血熱もマーズも皆、人畜共通感染症なのです。

 

そこで、One World-One Health(一つの世界、一つの健康)という概念が今、重要視されているのです。

ヒトおよび動物の健康の両者が相まって初めて地球上の生態系は保全できます。

ヒトと動物の健康維持に向けた取り組みが必要なのです。

 

その中でも、一番の問題は、薬剤耐性に関する問題です。

感染症にかかると皆さまも「抗菌剤」を処方され、数日うちには症状が落ち着いた経験をお持ちだと思います。

しかし、今、その抗菌剤を使い過ぎて、抗菌剤が効かない細菌が増加しているのです。

このまま対策をとらなければ、2050年には1000万人の死亡が想定され、がんの死亡者数を超えるとされています。

医療者だけ意識改革を行えばすむ話ではありません。

なぜならば、日本では抗菌剤を万能薬と勘違いしていらっしゃる方も多いからです。

風邪でも抗菌剤を処方されなければ納得いかぬ患者さんやストック用の抗菌薬処方を求める患者さんもいらっしゃるため、適正使用のためのガイドラインを出しても「現場」でそれが実践されているかと言えば、そうとも言えない現実がございます。

 

さらに動物では人間以上の問題が。

動物用抗菌剤の販売医療は人間の2倍。

家畜は一般的に集団で飼育されるため、集団に与える水やえさに混合して薬を投与します。

そうなると、治療が必要な動物はもちろん、投与が本来必要がない動物へも薬が投与されることになってしまいます。

また、医薬品としてだけではなく、成長促進や飼料効率改善の目的で、飼料添加物として薬が投与されています。

 

感染症に国境はないことを考えると、これは日本だけが守っても菌の発生を封じ込めることはできません。

しかし、新興国の抗菌剤使用料は増加の一途をたどっています。

以前、日本で起こっていた「安易な抗菌剤処方」現象が、アジア諸国で起こり始めているのです。

新興国で適正使用が行われぬまま放置していると、耐性菌が生まれることで、新たな感染症がすぐに海を渡ってくる危機は免れないでしょう。

 

勉強して臨んだつもりでしたが、話を聞けば聞くほど危機的状況であることが認識できました。

3月中に政府はアクションプランを出す予定です。

あと数日。

皆さまもその動向にご注意いただきたいと思います。

 

怪我をしても肺炎になっても中耳炎でも、抗菌剤が効かない。

ペニシリンが生まれる前の時代に後戻りする事態がそこにあります。

私もさらに学びを続け、議論できるところまで高めてまいりたいと思います。

 

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予算委員会

3月18日、予算委員会、外交・安全保障集中審議

今まで、医療・福祉・子育てや女性問題を中心に質疑いたしておりましたが、今回初めて「外交・安全保障」を議論する場に立たせていただきました。
昨年、韓国で開催された「第1回グローバルヘルスに関するアジア太平洋国会議員フォーラム」に参加して以来、保健医療分野において、日本が新たなリーダーシップを世界から求められていることを知り、私なりにこれまで学んできたことを確認し提案してみようと考えました。
しかし、安保法制や拉致問題、防衛など議論される中、果たして「国際保健」という少々色が違う議論が受け入れられるのか、一抹の不安を抱えながらの質疑でした。

西アフリカのエボラ出血熱は1万人以上の死者をだしました。
主要産業である鉱山は閉鎖され、感染拡大防止のために国境も市場も閉鎖され、経済手損失は計り知れないものとなっております。
また、隣の韓国でも昨年はマーズ騒ぎで病院が閉鎖され観光も大打撃を受けるなど、経済活動にも支障が出ました。

今や飛行機で12時間もあれば地球の裏側まで行ける時代です。
遠い国の感染症流行も、そこにある危機となったのです。
感染症にもはや国境はありません。
そのため、国際保健は「一保健分野」に留まることなく、より高いレベルで議論され始めているのです。
昨年、国連においても「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に感染症を含む幅広い疾患対策が達成目標となりました。

今年は5月に伊勢志摩サミットが、9月には保健大臣会合が開催されます。
海外から、日本が「グローバル・ヘルス・リーダー」として、世界の保健医療水準の向上にさらに貢献することが期待されています。
この機会に、日本が国際保健において強いリーダーシップを発揮することは、日本の存在価値を上げ、新たな立ち位置を確立することにもなるのです。
保健医療は、開発や国家成長の重要戦略であるのみならず、外交安全保障戦略の主軸となっているのです。

日本には、国民皆保険制度(保険証1枚でどこでも医療が受けられる)がございます。
そして、世界最高水準の衛生状態を保ってきた公衆衛生の技術がございます。
これらを「日本の強み」としてさらに力を発揮できるチャンスがまいりました。
日本の技術を売り出すためにも国内外にこのことを広く知らしめる必要があるのです。

これまで、世界の開発分野では「貧困があって病気になる。だから経済開発を優先すべき」という考えがございました。
しかし、最近では「病気があるから貧困になる、だから健康に投資しなければならない」という考え方に変化してきたのです。
今回の西アフリカのエボラ出血熱は、「健康に投資をすることで、経済活動を促すことができる」ことを教訓とすべき事例となったのではないでしょうか。
外務省へは「医療保健」を外交の主軸としてさらに強めて欲しいことお願いいたしました。

しかし、それを実際に行う「人」「人材」が不足しているのです。
国連も世界保健機構においても、「お金は出すが人はいない」という状況が続いております。
拠出額に見合った職員数の三分の一以下の日本人職員では、日本の存在価値を上げることはできません。
厚労大臣からは、以前私が提案した「感染症マネージメントができる人材育成」のために4名の研修生が海外で研修中だとご報告いただきました。
また、厚労省からもWHOへは2年周期、外務省への人事交流も始めたばかりであり、何とかせねばならぬと審議会でも議論中であることをお話しくださいました。

さらに、日本が世界へ貢献している一例として、戦後の日本で生まれ、母子保健の改善に大きく寄与してきた母子健康手帳をご紹介いたしました。
母親と子ども双方の健康を守るツールとして、途上国をはじめ妊産婦の健康と小児死亡の減少を目指す国々で注目を集め、今では、日本初の母子手帳は世界30か国以上、年間800万冊利用されるにいたっています。
死亡率の低下は、母子手帳を使用することで、妊娠・出産・育児に対する情報の提供を行い、「女性の当事者意識」を喚起し、身近な生活者視点が活かされた結果ともいえるのです。
今回の会議においても、女性の「生活者としての視点」を大切にしたシステムを構築し、地に足ついた施策として欲しい旨、総理に提案いたしました。

現在、日本は世界でどの国も経験したことのない速度で高齢化が進行しています。
これからどの様な形で持続可能な社会保障制度を構築していくのか、世界中が注目しています。
我々の経験を世界と共有しながら、国際保健のリーダーとして世界の保健医療を牽引していくことを強く求め、質疑を終わらせていただきました。

賛否両論いただきました。
しかし、私は日本の持ち得る知恵や技術が国際平和、そして平和外交の強力なカードとなり得ることを肌身で感じてまいりました。
そして、そのことを皆さまと共有する機会がこの様に予算委員会の場で持てたことは幸せだったと思います。
まずは伊勢志摩サミットにおいて「日本が考える国際保健」がどの様な形で発信されるのか注目してまいりたいと思います。

応援いただきましたこと、心から感謝申し上げます。

 

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プロフィール

薬師寺道代
(やくしじみちよ)
参議院議員
医師
(専門:生命倫理・医療政策・緩和医療・医療コミュニケーション)
NPO法人 からだとこころの発見塾 理事

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