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2010-08-13

エイズと地域主導

エイズは過去の病気だと思っていませんか?報道が過熱した一時期と違って、社会の関心が薄れ、先進国の中で唯一増加傾向にあるのが日本なのです。

現在全世界でのHIV感染者は5千万人に達すると言われています。アジア・アフリカ地域の開発途上国において感染拡大が見られています。サハラ以南のアフリカには全世界の60%近くのエイズ患者がいるといわれ、国存亡の危機とも言われています。

ここ日本でも、「4~6月に国内で新たに報告されたエイズ患者は1~3月よりも35人多く、過去最多の129人だった」と厚生労働省のエイズ動向委員会が発表しました。しかし、一方、新型インフルエンザの終焉もあり、感染症に対する人々の関心が薄れています。検査を受ける人も減っているとの発表もありました。地域保健所では、匿名で無料の検査を実施しており、厚労省では、是非受診して欲しいと訴えています。

そもそも、「エイズ」「HIV」とは何なのでしょうか?
「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的(生まれた後に)に「身体の抵抗力」を奪ってしまう「内外からの攻撃に抵抗できない状態」を作り出す、このことを「後天性免疫不全症候群Acquired Immune Deficiency Syndrome; AIDS)」と呼んでいるのです。その頭文字をとった「AIDS」を日本では「エイズ」と呼んでいます。

HIVの感染後2-4週で、風邪のような症状が起こるといわれます。しかし、その症状も数日~10週間程度で軽くなり、感染したことには気づかれません。「風邪ひいてしまったかしら?」「最近体調が悪いな」くらいで済んでしまいます。

問題は、ここ。ここから5~10年、全く症状が出ないのです。この間、見た目は健康そのものに見えるものの、体内でHIVが盛んに増殖を繰り返しています。感染に気付くこともありません。

しかし、身体の抵抗力がある程度まで減少していくと、「免疫力低下症状」を示すようになります。多くの場合、最初は全身がだるい、体重が急激に減少してきた、いつまでたっても治らない下痢、すぐに疲れる、原因不明の発熱、のどが痛い、咳など、風邪によく似た症状が起こります。さらに抵抗力が弱まってくると、普通の生活ではかからないような弱い細菌などによる感染症や、悪性腫瘍によって、生命に危険が及びます。

もちろん、適切な治療によってHIVが感染してもエイズの発症は抑えることも可能となってきました。しかし、依然として完全に治すことができない病気です。予防できるものはしっかりと予防して、他人に感染することを回避し、早期に治療を開始しなければなりません。

また、「HIV」自体は、通常の環境では非常に弱いウイルスであり、普通の社会生活をしている分には感染者と暮らしたとしてもまず感染することは無いのです。言われもない「偏見」から感染者の皆さまを守ることも大切な啓蒙活動の一つです。

本来、匿名性が高いはずのHIV検査。しかし、若者や地方の方々は、医療機関や保健所の敷居が高い、遠い、周囲の目もあるなどから、「献血」をHIV検査目的にしている傾向もあるようです。「地域的な検査体制の在り方をもう一度確認すべき」と厚労省も見解を示しています。

これこそ、地域・年代による違い。国が一律に制度を整備するのではなく、地域のことは地域にお任せする、地域主導の中で解決してもらったらどうなのでしょう。全国一律金太郎アメの弊害がここにも。地域のNPOや心ある先生方の活動こそ国は学ぶべき。健康対策こそ、地域に競争させ、より知恵と工夫を発揮させる仕組みを作るべきだと考えています。

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プロフィール

薬師寺道代
(やくしじみちよ)
参議院議員
医師
(専門:生命倫理・医療政策・緩和医療・医療コミュニケーション)
NPO法人 からだとこころの発見塾 理事

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